有事の円買い/有事の円高
英語では適当な言葉がありません。相場格言のひとつであった「有事のドル買い」を模して作成された為替(FX)用語だと思われます。
2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件以降、アメリカとドルの信用は失墜し、代わりに安全通貨として認識されるようになったのがスイスフランと日本円でした。
特に円は、
1.日本が世界最大の債権国であること(対外資産が対外債務を上回っている額が世界一の黒字国家で信頼感が高いということです、近年はドイツ、中国と首位の座を争っていますが)
2.当時から日本はデフレであること(有事の際にリスクオフとなるとドルを金や現金に替える動きが起こるわけですが、モノの価値が低くお金の価値が高いデフレ状況下の通貨である円は、インフレ状況下の国々の通貨よりも、価値が下がらないからです)
3.円キャリー取引の巻き戻しが起きること(有事の際には低金利の円を売って高金利の新興国通貨で株や債権の運用をしていた投資家が、リスクオフとなると取引を手仕舞うためです)
から、有事の際には米ドルではなく円が買われるようになってきました。
ただし、北朝鮮のミサイル発射など東アジアの有事は日本にとっては地政学リスクが発生しますので、有事ではありますが地政学リスクによる円安と有事の円高の綱引きとなり、どちらに転ぶかはわかりません。
そして、新型コロナウイルスの流行後の歴史に例のない金融緩和の中で、テーパリングが議論されるようになると、利上げに動くとされたポンドやキウイ、米ドル高が起こりました。その中でもリスクオフ、有事においては、円高とドル高が拮抗し、米ドル/円のボラティティが小さくなっています。
有事のドル高も復活したので、有事の際には米ドル/円はかつてと異なり円高とななりにくいと覚えおておきましょう!
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