アジア通貨危機
英語ではAsian Financial Crisis(エイジアン・ファイナンシャル・クライシス)です。1997年にタイで始まったこの通貨危機は、インドネシアなどのASEAN諸国に加え、韓国にまで影響が及びました。
日本などを例外とし、当時の東アジア、東南アジア諸国は自国通貨とドルを連動させるドルペッグ制を採用していました。アジア諸国は日本同様輸出国です。安い人件費を求めて欧米日のグローバル企業の工場が多く進出していました。しかし、
1.中国が92年から社会主義市場経済体制に移行し、より安い人件費を求めて東南アジアから中国への工場のシフトが起きつつあった
2.アメリカが1995年の1ドル=79.75円の最高値以降ドル高政策に方針を転換、98年には146円をつけ、この結果、ドルに連動した東南アジアや韓国の輸出力はドル高=自国通貨高により急激に落ちていました
この二つの理由により、韓国や東南アジア諸国の輸出は激減し、GDP成長率も低迷しました。各国の財政は赤字(経常赤字国)で、外貨準備高も小さく、自国通貨安になった際に自国通貨を買い支える資金も不足していました。
ここに目をつけたヘッジファンドが、韓国や東南アジア諸国のの通貨に大量の空売りを仕掛けると、一度は外貨準備の切り崩しで対抗したものの、再度の空売りでアジア諸国の通貨は暴落しました。
ドルペッグ制も破棄され、変動相場制に移行すると、ドルに対して半分以下の価値となり、IMFからの救済を受けることとなったわけです。ムーディーズなど格付け機関によるソブリン債の格付けの変更も追い打ちをかけました。
現在も実体経済の裏付けのないエマージングマーケットにさえ、世界的な大規模な量的緩和による有り余った資金が溢れかえっています。しかし、アメリカを先駆けとした金融引き締めにより、こうした資金はアメリカを中心とした先進国に還流しつつあります。これにヘッジファンドが目をつけていないはずはありません。
トルコリラの2018年8月の暴落はまさにこのアジア通貨危機と似たような状況と言えるでしょう。しかし、アジア通貨危機の時代と比べると各国の外貨準備高が数倍から数十倍になっているので、他国への波及は心配ないというのがエコノミストやストラテジストの意見ですが。
2019年は先進国の中央銀行の相次ぐ利上げ停止により、後進国への資金の巻き戻しが起こっています。
しかし、トランプ大統領のゴラン高原のイスラエルへの帰属発言にトルコのエルドアン大統領が反発、安定していたトルコリラが米ドルに対して急落しました。利上げに反対するなど大統領のこうした動きは2021年11月現在まで続いており、トルコリラをロングしていたFX入門者や初心者は、ほぼ市場から強制退場させられたと思われます。
アジア通貨危機と同じようなことが中東やラテンアメリカでいつ起こっても不思議ではなりません。高金利のエマージング通貨に投資している方は気をつけましょう!
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