私小説&海外古典短編小説

『ハモンハモン』欧州恋愛映画にみられる思春期の父と娘、母と息子のような愛を描いた 1992年: 8点

 松田遼司の「旅行・音楽・美術好きのための映画・漫画評論」。アマゾンプライムなどで配信されている名作を中心にお届けします。

 今回は、『思春期の父と娘、母と息子のような愛』を描いたハモンハモン』を紹介します。

 

『ハモンハモン』の概要

 『ハモンハモン』は、2010年に結婚したペネロペ・クルスハビエル・バルデムの初共演作で共に出世作となったビガス・ルナ監督の92年の作品。「性欲と食欲でいっぱいの6人の男女のどろどろの愛情関係を描いたまさにラテン系」のスペイン映画です。米国最大の映画データベースの批評サイトIMDbの視聴者15,000人による平均スコアは6.4と低評価です。やはり内容が無茶苦茶すぎるのでしょう。

 ヒロインの少女シルヴィア役はハリウッドでも活躍、現代を代表する女優であるがペネロペ・クルス。ペドロ・アルモドバル監督のミューズとして『オール・アバウト・マイ・マザー』(99年)、『ボルベール〈帰郷〉』(07年)などに主演、また一人の男と三人の美女との恋愛関係を描いた『それでも恋するバルセロナ』(09年)、ジョニー・デップ主演の大ヒットシリーズ最新作『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』(11年)などこの『ハモンハモン』で輝くばかりの美しさで観客を魅了し、トップスターへの道をかけあがっていくこととなります。

 シルヴィアと恋に落ちるスペインの種馬ラウルを演じたのが『それでも恋するバルセロナ』でも共演、私生活でもペネロペの夫となったハビエル・バルデム。そのマッチョで、セクシーな役をはまり役で演じたこの『ハモンハモン』がペネロペ同様出世作となり、ルナ監督の『ゴールデン・ボールズ』(93年)、アルモドバル監督の『ライブ・フレッシュ』(97年)でスペインでセクシー俳優として人気を確立、コーエン兄弟監督の名作『ノーカントリー』(08年)など近年はハリウッドで活躍する世界的スターとなりました。

 シルヴィアの母親である美しい売春宿の女将カルメンを演じたのが、美しい謎めいた美容師を演じたパトリス・ルコント監督の『髪結いの亭主』(90年)で知られるイタリアのセクシー熟女女優のアンナ・ガリエナ。ここでもその美しさで高い存在感を放っています。

 またシルヴィアの元カレの母親コンチータをベルナルド・ベルトルッチ監督の代表作『暗殺の森』(70年)などで知られるかつてのイタリアのセクシー女優、ステファニア・サンドレッリが演じています。

また『サン・ロレンツォの夜』などのタヴィアーニ兄弟、『ジンジャーとフレッド』など晩年のフェリーニ作品の映画音楽で知られるイタリアの名匠ニコラ・ピオヴァーニによる情感あふれる音楽が、作品の魅力をさらなるものとしています。

ハモンハモン』のネタバレなしの途中までのストーリー

 ネタバレなしの途中までのストーリーは、スペインの小さな町で始まります。街道沿いでかつて売春宿だったバーを営むカルメン(アンナ・ガリエナ)の娘シルヴィア(ペネロペ・クルス)と、大手下着メーカー社長マヌエルの息子ホセは恋人同志でした。ある日ホセがシルヴィアとの結婚を口にすると、ホセの母コンチータ(ステファニア・サンドレッリ)は二人の結婚を邪魔するためマッチョな青年ラウル(ハビエル・バルデム)にシルヴィアを誘惑させようと画策します。しかしコンチータはラウルのハモン(美味しそうな)肉体に溺れてしまいます。

 一方、シルヴィアに出会ったラウルは、本気でハモン(美味しそうな)なシルヴィアに惚れてしまいます。ホセが好きなシルヴィアは、再三の誘惑にもそっけありません。そんな時コンチータが買い与えたバイクに乗ったラウルが、シルヴィアの可愛がっていた子豚をはねてしまいます。シルヴィアがかけよったのはラウルで、自分の気持ちに気がつくのでした。愛し合う二人。しかし嫉妬に狂ったコンチータがラウルの正体をぶちまけると、…..。そして6人の意外な組み合わせによるドロドロの関係が始まりました…。

 

ハモンハモン』を観ての感想

 純粋に愛し合う若い男女、お金で愛を買おうとする熟女とそれに溺れる若い男、父性を求める父がいない少女、母性を求める少年、お金持ちと結婚したい貧しい少女…。こうした様々な感情が入り乱れて6人のどろどろの関係が繰り広げられます。

 日本と異なりラテン系のスペインでは、こうしたどろどろの関係も非常にオープンに展開されます。主要登場人物の全員が、少なくとも複数の異性と関係を持っているという設定は、日本では考えられない世界です。最近では清教徒主義だった米国のテレビドラマ『ゴシップガール』などもグチャグチャなので、ミレニアル世代以下には当たり前なのかもしれませんが。日本人の感覚では最終的には「若い二人の純粋な愛が上記の様々な感情に打ち勝つラブ・ストーリー」となるはずなのですがが…「最後に残った3つのカップルを当てるのは日本人には難しすぎる」でしょう。

 ヨーロッパにおいては「少年・少女期の恋愛では、自分を包み込んでくれる父性的な愛・母性的な愛が一番重要」なのだと再認識させてくれる作品です。

 「作品の魅力は何といっても当時18歳のペネロペの瑞々しい美しさ」です。まだあどけない少女の面影を残しながら、ハビエルとの激しいセックス・シーンなど体当たりの演技を披露しています。そして、『ハモンハモン』という題名どおり、「生ハムを女性に例えての、肉と女性へのあけっぴろげな欲望が画面に爆発する」そのエネルギーが凄まじいです。ま

 まさにスペインならではの「圧倒的な性欲と食欲シーン、マッチョ礼賛の精神に、草食系男子がもてはやされる現代の日本人はただただ圧倒されるだけ」でしょう。そして、日本では考えられない彼等の恋愛パターンにも驚かされます。

 4大スター共演で、「スペインやヨーロッパの恋愛について学べ、ペネロペやハビエルのセクシーさも堪能でき、コメディとしても楽しめ」ます。ちょっと刺激が強いですが….。「スペイン旅行気分も味わえる」ので、旅行好きにもおすすめです。

 

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