アラン・ドロン(Alain Delon) 松田遼司の映画評論スコア(8点)
60年代から70年代にかけて美男俳優の代名詞として日本でも一世を風靡したフランス人俳優。代表作は『太陽がいっぱい』『さらば友よ』『サムライ』『ボルサリーノ』など多数。
1935年パリ郊外生まれ。外人部隊へ入隊しインドシナ戦争へ従軍後56年に除隊、57年に映画デビューを果たした。
60年にはルキノ・ヴィスコンティのネオ・レアリズモの名作『若者のすべて』で貧困からなりあがろうとする主人公のロッコを演じ、さらに、ニーノ・ロータの曲と共に大ヒットした野心家の青年トムが金持ちの青年フィリップに成り代わろうという完全犯罪を描いた映画史に残るルネ・クレマンの傑作『太陽がいっぱい』で主人公のトムを演じ、一躍世界的スターとなった。
その後はアントニオーニ監督が得意の「不毛な愛」を描いたモニカ・ヴィッティ共演の難解な恋愛作品『太陽はひとりぼっち』(62年)、シシリアの公爵家を舞台に旧世界から新世界への時代の移り変わりを描いたバート・ランカスター共演のヴィスコンティ監督の最高傑作『山猫』(63年)、ジャン・ギャバン共演のフィルムノワールの名作『地下室のメロディー』(63年)、フランス革命前夜を舞台に庶民を助けるヒーローの活躍を描いた『黒いチューリップ 』(63年)などでフランス映画界のトップスターとしての地位を確立した。
67年には3人の名監督による怪奇もののオムニバス『世にも怪奇な物語』中のルイ・マル監督によるブリジット・バルドー共演の「影を殺した男」、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカスと共演した海底の宝探しの冒険へと赴く3人を描いた日本でも大ヒットしたロベール・アンリコ監督の名作『冒険者たち』、一羽の小鳥とともに暮らす孤独な殺し屋を演じた妻のナタリー・ドロン共演のフィルム・ノワールの傑作『サムライ』、名匠ジュリアン・デュヴィヴィエの遺作であるサスペンス『悪魔のようなあなた』に立て続けに主演、世界でも最も人気の高い俳優の一人となった。
その後も現金奪取を計画した男の友情を描いたチャールズ・ブロンソン共演の傑作『さらば友よ』(68年)、マリアンヌ・フェイスフルの素肌に身につける黒皮のツナギ姿が話題となったマンディアルグの名作小説『オートバイ』を映画化した『あの胸にもういちど 』(68年)、ジャン・ギャバン、リノ・ヴァンチュラ共演のシチリア・マフィアによる宝石強奪計画を描いた『シシリアン』(69年)などヒット作に主演、様々な役柄を演じた。70年にはフランス映画を代表するもう一人の人気俳優ジャン=ポール・ベルモンドと共演を果たしたマルセイユの暗黒街を舞台に二人のギャングの生き様と友情を描いた『ボルサリーノ』がテーマ曲と共に大ヒットとなった。
以降、宝石店襲撃犯の生き様を描いたイヴ・モンタン共演のメルヴィル監督によるフィルム・ノワールの傑作『仁義』(70年)、富裕な男性とパートナーの生活にある黒人女性が入り込むことにより生まれた三角関係を描いたパートナーだったミレーユ・ダルク共演の『栗色のマッドレー 』(70年)、チャールズ・ブロンソン、三船敏郎共演の異色西部劇『レッド・サン』(71年)、若返りをテーマとしたサスペンス『ショック療法』(72年)、高校教師と女性との破滅的な愛を描いた大ヒット作『高校教師』(72年)、ロシア革命のリーダーだったリチャード・バートン扮するトロツキー暗殺を描いた『暗殺者のメロディ』(72年)、ドロン演ずる更正しようとする元犯罪者とギャバン演ずる彼を暖かく見守る保護監察司を描いた悲しいヒューマンドラマの名作『暗黒街のふたり』(73年)、ダルク演ずる精神が錯乱している女性を暖かく見守る弁護士を演じた『愛人関係』(73年)、『ボルサリーノ2』(73年)、政治家と愛人のファッションモデルの悲恋を描いたシドニー・ローム共演の『個人生活』(74年)、メキシコを舞台に正義のヒーローを演じた『アラン・ドロンのゾロ』(74年)、口髭をたくわえて迫害されるジプシーの犯罪者を演じた『ル・ジタン』(75年)、ジャン=ルイ・トランティニャン演ずる犯罪者と対決する刑事を演じた『フリック・ストーリー』(75年)など日本では出演作品のほとんどが大ヒットとなり、その人気は絶大だった。
80年代以降はさすがに人気は衰えたものの監督・主演を務めた私立探偵物サスペンス『危険なささやき』(81年、83年日本公開)、プルーストの『失われた時を求めて』を映画化した『スワンの恋』(83年)、稀代のプレイボーイを演じた『カサノヴァ最後の恋 』(92年)などで、高い存在感を見せていた。
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