私小説&海外古典短編小説

カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)松田遼司映画評論スコア(9点)

 60年代の『シェルブールの雨傘』『昼顔』から70年代の『哀しみのトリスターナ』『ひきしお』、80年代の『終電車 』『ハンガー』、90年代の『インドシナ 』と、40年以上にわたり活躍を続けてきたフランスを代表する美人女優。姉は故フランソワーズ・ドルレアック。

 43年パリ出身。60年映画デビュー。62年にはマルキ・ド・サドの代表作である同名小説をナチス支配時のフランスに置き換えてロジェ・ヴァディム監督が映画化した『悪徳の栄え』でアニー・ジラルド演ずるナチの高官の愛人として成り上がる姉と対照的な無垢な妹を演じ、脚光を浴びた。63年には傘屋の娘と自動車集理工の青年との純愛がアルジェリア戦争によって引き裂かれてしまうジャック・ドゥミ監督のミュージカル映画『シェルブールの雨傘』がミシェル・ルグランのテーマ曲と共に大ヒットとなり、一躍スターダムに躍り出た。64年には潔癖症で男嫌いの娘が姉の旅行中に見た夢が実は現実だったというロマン・ポランスキー監督のサスペンス・ホラーの傑作『反撥』での危ない美しさが話題となった

 66年にはドゥミ監督と再び組んだミュージカル映画『ロシュフォールの恋人たちで姉のフランソワーズ・ドルレアックと夢見る双子を演じ、歌と踊りを披露、そのファッションも話題となった。67年にはヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したルイス・ブニュエル監督の問題作『昼顔』でハンサムな外科医の妻という恵まれた環境にありながら昼間に高級娼婦として働く不可思議な女心を持つ女性を演じスキャンダラスに騒がれ、出演作が常に話題となるフランスを代表する女優としての地位を確立した。

その後はジャン=ポール・ベルモンド共演のフランソワ・トリュフォー監督による悲恋映画『暗くなるまでこの恋を 』(69年)、19世紀末のオーストリアのルドルフ大公とマリーとの命を懸けた愛を描いたシャルル・ボワイエとダニエル・ダリューの名作をオマー・シャリフ共演でリメイクした『うたかたの恋』(69年)、娘としてひきとられた没落貴族と結婚させられてしまう若い女性の愛と復讐を描いたブニュエル監督と再び組んだ『哀しみのトリスターナ』(70年)などのヒット作に主演、国際的スターとしての地位を揺ぎ無いものとした。

 70年代になると、孤島での奴隷のように女が男に従う愛の姿を描いたマルコ・フェレーリ監督による『ひきしお』(70年)、子供を失った夫婦がその悲しみを乗り越えようとする『哀しみの終るとき』(71年)、男性の妊娠を描いたラブコメ『モン・パリ』(73年)と、マルチェロ・マストロヤンニ共演の作品に連続出演し、マストロヤンニと私生活でもパートナーとなり女優となった娘キアラ・マストロヤンニにも恵まれた。その後もヴェニスで実際に起きた20世紀初頭の殺人事件を軸に兄妹の愛を描いたジャンカルロ・ジャンニーニ共演の『哀しみの伯爵夫人』(74年)、超能力をもつ若い女流小説家と彼女をとりまく三人の男たちの愛の葛藤を描いたブニュエルの息子が監督した『赤いブーツの女』(74年)、イヴ・モンタン共演のロマコメ『うず潮』(75年)などで変わらぬ人気を誇った

 80年代以降は、さすがにその美しさは衰えを見せたものの、ナチス占領下のパリを舞台に劇場主の妻と俳優の愛を描いたセザール賞主要十部門受賞のフランソワ・トリュフォー監督の名作『終電車 』(80年)、現代のニューヨークを舞台に数世紀に渡り生き続けてきた女吸血鬼の生き様を描いたデヴィッド・ボウイ共演のサスペンス・ホラー『ハンガー』(83年)、フランス領インドシナを舞台にゴム園を経営するフランス人女性とそのベトナム人養女、フランス軍将校との三つ巴の恋を描いたヴァンサン・ペレーズ共演のアカデミー外国語映画賞受賞の名作『インドシナ 』(92年)、ゲーテの『ファウスト』をモチーフにした学者の妻に恋した悪魔と悪魔に誘惑される学者を描いたジョン・マルコヴィッチ共演のポルトガルの巨匠オリヴェイラ監督による高い精神性を持つ名作『メフィストの誘い』(95年)、悲劇の主人公を熱演したビョークの唯一の友人を演じたカンヌ映画祭パルムドール受賞の暗すぎる名作『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00年)、歌と踊りも披露し、ファニー・アルダン 、エマニュエル・ベアールら名女優勢ぞろいの他の7人と共にベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)を受賞したフランソワ・オゾン監督のミュージカル仕立てのサスペンス『8人の女たち』(02年)などの高品質な作品で、威厳のある高い存在感を示していた

 19年には大女優の自伝本をめぐるドラマで各国のスターが勢揃いした是枝裕和監督作品『真実』に出演、元気な姿を見せていた。

 

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