『チャイニーズ・オデッセイ』愛よりも師匠と信仰を選ぶ辛さを描いた 1995年:8点
松田遼司の「旅行・音楽・美術好きのための映画・漫画評論」。アマゾンプライムなどで配信されている名作を中心にお届けします。
今回は、『愛を捨ててまで師匠と信仰をを選ぶ哀しさ』を描いた『チャイニーズ・オデッセイ』を紹介します。
『チャイニーズ・オデッセイ』の概要
『チャイニーズ・オデッセイ』は、『三国志』などと並び何度も映画化や漫画化されている古典『西遊記』をベースにした冒険恋愛コメディです。人気キャラである猿の姿をした仙人「斉天大聖孫悟空」の哀しき恋愛を描いています。
香港映画らしい大げさな笑いとカンフー・アクションの中にも、人のつながりの重要性を説いた精神性の高い作品です。米国最大の映画データベースの批評サイトIMDbの視聴者8,000人による平均スコアは7.5とまあまあの評価です。
主役の孫悟空/転生した尊宝役は香港のコメディ王とされたチャウ・シンチー。日本では『少林サッカー』(01年)、『カンフーハッスル』(04年)の大ヒットで人気となりました。
猪八戒/副首領役は盟友のン・マンタ。独特の濃い演技で一度見たら忘れない名バイ・プレイヤーです。
其の一のヒロインの白骨の精ジンジン役はチャウ・シンチー作品の常連のカレン・モク。其の二のヒロインの紫霞仙子/盤絲大仙役は『射鵰英雄傳』 でヒロイン黄蓉役で知られていたアテナ・チュウです。
『チャイニーズ・オデッセイ』のネタバレなしの途中までのストーリー
ネタバレなしの途中までのストーリーは、観音菩薩と三蔵法師、孫悟空(チャウ・シンチー)の対面の場面から始まります。悟空は菩薩から経典をインドから持ち帰らず牛魔王と三蔵を殺害しようとしたと責められます。悟空は観音に立ち向かい、瓶に入れられる所を、三蔵法師が身代わりになると命ごいをして助けられます。法師の心を理解するようにと山賊珍宝として500年後に転生しました。
500年後の砂漠にロバに乗った女が現れます。山賊たちは女と油断しましたが蜘蛛の精の妖怪春娘でした。足の裏に3つの心紋がある孫悟空を探しに来たのでした。尊宝と山賊たちは彼女を毒殺しようとしますが、毒で雲の姿に変身した春娘に追い詰められました。騒ぎの中、妹ジンジン(カレン・モク)も現れましたが、こちらも白骨の精の妖怪でした。実は500年前にジンジンは悟空と婚約しており、まだ未練があったのです。二人共盤絲大仙(アテナ・チュウ)の弟子でした。
そのうち珍宝とジンジンは愛し合うようになりますが、三蔵を奪おうと現れた牛魔王と戦う中で誤解によりジンジンは自刃します。それを止めようと月光の箱で過去に何度も戻った尊宝は最後には誰もいない洞窟に出現してしまいます。そこにロバに乗って現れたのは紫霞仙子で水連洞の名前を盤絲洞に変えました。尊宝は500年前に戻ってしまったと気づきます。「ここは全て自分のものだ」と叫んだ彼女が所有物である尊宝の足の裏に印をつけると、孫悟空になっていたのでした…..
『チャイニーズ・オデッセイ』を観ての感想
悟空は、500年前にはウザい三蔵法師を嫌っていました。しかし人間に転生させられ、色々な人や妖怪に出会い、戦い、助け合ううちに、人と人との絆の重要性を理解していきます。
ジンジンを愛していたはずが、紫霞の気持ちに惹かれ、彼女が運命の人ではと思うようになりました。しかし、ジンジンとの事があるためその気持を抑えます。そうして彼女を突き放した結果、後悔することになります。
『恋のエチュード』にあったように、「恋にはタイミングがある」のです。「どんなに愛し合っていたとしても結ばれるとは限りません」。結婚相手が本当に自分が最も愛していた人ならば幸せになれるでよう。しかし、そうでない場合、結婚後に運命の相手と出会ってしまったら、人はどうすべきなのでしょうか?
チャウ・シンチー作品(監督は今回はしていない)らしいドタバタコメディとアクションが楽しめます。孫悟空の活躍シーンでの京劇風の音楽は場を盛り上げてくれます。ジャンク作品ともなりかねない内容なのですが、意外と重いテーマがあるので、それを妨げています。旅行・音楽・アートとはあまり関係はありませんが、観ても損はない作品でしょう。
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