「広末騒動」で考える「不倫」は「文化」ではないが「地獄」では「一番軽い罪」、「大麻」は?
日本の「ネットニュース」を見ていると「芸能人の不倫ニュース」が目につきます。最近騒がれていたケースでは、「広末涼子さんが不倫のせいでCMや映画などの仕事が全て無くなってしまう」とありました。これは「行き過ぎ」ではないでしょうか?
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日本で「男性の不倫が悪」となったのは「戦後」から
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明治以前には日本は男尊女卑で「女性の不倫は死刑」だった
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西洋では「不倫は普通」に行われていた
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現在も南欧の映画では日常的なテーマ、米国映画でも!
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米国でも実際は少なくないし、仕事が無くなることはない
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ダンテの『神曲』でも「肉欲」は地獄でも一番軽い罪
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不倫をした芸能人を糾弾する権利のある「聖人」はどれだけ存在するのか?
1. 日本で「男性の不倫が悪」となったのは戦後から
日本で「男性の不倫が悪」とされたのは戦後の事だと思われます。
まず、戦前が舞台の小説や映画では、「お妾さん」が登場します。「お妾さん」は男性の母親や妻も黙認している存在であり、「お金で囲われている」わけで恋愛感情はない場合が多く「不倫とは異なる」でしょう。
しかし、「愛人」は恋愛関係にあるので「不倫」と同義だといえるでしょう。昨今ブームとなっていた太宰治などは多くの「愛人」がおり心中事件も何度も起こしています。いわば「広末事件」と「猿之助」事件を同時に起こしたわけですが、その「人気は衰えません」でした。
戦後に「男性の不倫が悪」とされたのは占領国である「米国の方針」からでしょう。清教徒だった「アングロ・サクソン系が主流を占める米国」では「不倫は悪」とされていたからです。
2. 明治以前には日本は男尊女卑で「女性の不倫は死刑」だった
日本でも「不倫」は普通に行われてきました。日本を代表する文学作品である「源氏物語」を知らない日本人はいないでしょう。この物語が主人公「光源氏の不倫物語」かというと、一概にそうとはいえまえん。「一夫一婦制」ではなく「正室の他に側室もいる」時代なので、「現在の不倫とは違う」でしょう。しかし、「不倫は平安時代から存在していた」わけです。
武家の時代となり「面目」が重要となると「不義密通」が罪になります。江戸時代には「夫が不倫した妻と間男を処分しても無罪」でしたが、「妻のある夫が不倫をしても無罪」であり、これは「男女不平等な法律」でした。これは男性も責められる「現在の不倫とは異なる」ようです。
3.西洋では「不倫は普通」に行われていた
西洋ではモーゼの「十戒」の中にある「姦淫」は「処女でない未婚女性」、「不倫」、「同性愛」で、「罰は死刑」でした。「清教徒」が多い英国や米国など「アングロ・サクソン系」はこの教えを守っていたため、「不倫が罪」とされていたわけです。
一方の欧州大陸。特に「カソリック諸国」では「懺悔すれば許される」、「上流階級は政略結婚」だったため、「愛人との不倫は普通」なことでした。『三銃士』に登場するフランス王ルイ13世の王妃アンヌ・ドートリッシュと英国王チャールズ1世の寵臣バッキンガム公爵、『ベルサイユのばら』に登場するアントワネットとフェルゼンが「愛人関係」にあったことは有名です。
4.現在も南欧の映画では日常的なテーマ、米国映画でも!
現在でも欧州諸国、特にカソリック国であるフランス、イタリア、スペイン映画などでは「不倫」は映画の人気のあるテーマとなっています。何度も映画化されたラクロの「危険な関係」、名匠ヴィスコンティの遺作「イノセント」、ペネロペ・クルスのデビュー作「ハモンハモン」など枚挙にいとまがなありません。
30の不倫映画というウェブサイトを見れば、いまや「米国映画にも不倫映画が沢山ある」ことが分かるでしょう。みなさんもいくつかはご覧になっているのではないでしょうか?
5. 米国でも実際は少なくないし、仕事が無くなることはない
このように現在の米国では「不倫映画が人気」のように、「不倫」は珍しくもありません。クリントンやトランプなどの「元大統領の不倫も公然の秘密」です。こうした状況下でハリウッドなどの「セレブの不倫」が起きた場合には「日本のように仕事が無くなったりする」のでしょうか?
現在は泥沼離婚訴訟となっていますが、誰もが知っていた「Brangelina」と呼ばれていたブラピとアンジーの「理想のカップル」。しかしこの結婚も二人が「Mr.&Mrs.スミス」で共演して「恋に落ちた」結果であり、当時のブラピは大ヒットテレビドラマ「フレンズ」の主役だったジェニファー・アニストンと結婚していました。翌年1月の離婚調停発表後の4月にはケニアでの旅行が目撃され、「不倫」と噂されました。
この後に「Brangelinaの仕事が無くなったか」どうかは、誰もが知っていることです。
6. ダンテの『神曲』でも「肉欲」は地獄でも一番軽い罪
「不倫」を含む「肉欲」に溺れた人が落ちる地獄は「辺獄」に続く「第二圏」で最も罪の軽い地獄です。その下には「大食者」の地獄、「貪欲者」の地獄、「憤怒者」の地獄、「異端者」の地獄、「他人」に対してだけでなく「自殺」や熱帯雨林破壊など「自然」へのものを含む「暴力者」の地獄、「婦女を誘拐して売る」「追従者」「恨みを持った人に占い師に頼んで呪いをかけるイカれた人」「汚職者」「偽善者」「泥棒」「謀略者」「詐欺師」「不和を起こす人」が落ちる「悪意の者」の地獄、そして一番下には、「家族への裏切り」「国家への裏切り」「主人への裏切り」からなる「裏切り者」の地獄が位置しています。特に「イエス様を裏切ったユダ」と「シーザーを刺殺したブルータスとカッシウス」が「堕天使ルシファーの口の中」で噛み砕かれています。
7. 大麻は米国では合法の州が増えている
大麻で芸能人生活を奪われている方も少なくありません。この大麻を合法にするかどうかは意見が分かれるところです。賛成派は「大麻は煙草よりも害がなく、医療用にも使用されている」としています。反対は「大麻自体は害でなくとも常習性がありより強いコカインや覚醒剤などのハードドラッグを求めるようになる」としいます。しかし日本のように「使用が発覚したた仕事がなくなる」ことはありません。
添付の英語版ウィキペディアにあるように米国では医療用大麻は50州のうちほぼ8割に当たる38週で合法です。レジャー用大麻も23州とほぼ半分は合法としています。
8. 不倫をした芸能人を糾弾する権利のある「聖人」はどれだけ存在するのか?
6.で見てきたように、「汚職者」「泥棒」「詐欺師」は現在の日本でも犯罪者です。しかし、「不倫」よりも重い罪を犯しているのに「罰せられていない人達」が沢山存在しているわけです。
「婦女を誘拐して売る」のは、まさに「客を風俗へ売るホスト」でしょう。これは先日一人逮捕されたニュースが出ましたが、実際には数多く存在しているのでしょう。
「追従者」は、「上司におべっかを言って偉くなった会社や官庁などのお偉方」に当たりますが、こうした人達に罪悪感はないでしょう。
「偽善者」は、「本当は悪人の癖に、良い人を演じている、恥ずべき人」です。
「謀略者」は、「権謀術数で相手を貶めて偉くなった会社や官庁などのお偉方」ですが、「マキャベリズム」は彼が称賛した奸雄「チェーザレ・ボルジア」と共にこの国では絶賛され、英雄視されています。まさか自分が地獄行きだとは思っていないでしょう。
「不和を起こす人」は、政敵や恋敵にあらぬことをふきこんで疑念を植え付ける悪者、シェイクスピアの『オテロ』のイアーゴのような人物です。みなさんの周りにもいるはずです。
「家族への裏切り」は、遺産相続などで富を独り占めにする人で、これは昔から骨肉の争いとして知られています。
「国家への裏切り」は、最先端半導体技術を海外企業に持ち込んだ技術者や和牛の精子を持ち出した商人のような人のことでしょう。
「主人への裏切り」は、戦国時代なら明智光秀、現代なら仕えた議員の家族を裏切った元秘書などが当たるのでしょうか?これが「一番罪が重い人が落ちる地獄」だそうです。
このように、「不倫」や『神曲』には登場しない(米国ではほぼ半分の州で合法化されている娯楽用)「大麻」所持の罪を糾弾できるような「憤怒」「暴食」「貪欲」「偽善」「追従」「権謀術数」「恨み」「不和を起こす」「遺産相続争い」「国家への裏切り」などを含めた『神曲』では地獄に落ちることになるが現在の日本では罪とされていない「罪を犯していない方がどれぐらい存在する」のでしょうか?
「不倫」は「文化」などでは決してなく「罪」であるのは間違いありません。しかし、「世の中にはもっと罰せられるべき方がいる」のではないのでしょうか?
「生活の糧となる仕事まで全て奪ってしまう」のはやり過ぎであり、「人間の領分を超えている」のではないのでしょうか?