私小説&海外古典短編小説

シルヴァーナ・マンガーノ(Silvana Mangano) 松田遼司映画評論スコア(9)

ヴィスコンティやパゾリーニ監督のお気に入りとして『アポロンの地獄』『華やかな魔女たち』 などで貴族や上流階級の夫人役での洗練された美しさで観客を魅了したイタリアの美人女優。

 デビュー時は『にがい米』『アンナ』 などでセクシー女優として活躍した

 1930年ローマ生まれ。48年に農村を舞台にしたネオ・レアリスモの名作『にがい米』に主演、そのセクシーさで一躍スターとなった。

 以降、俗世をたったはずが未練を断ち切れない尼僧を妖艶に演じた『アンナ』(52年)、ホメロスの叙事詩『オディッセイ』を映画化したカーク・ダグラス共演の史劇『ユリシーズ』(54年)、キューバのダンスミュージック「マンボ」を世界的に流行させた『マンボ』(54年)などでセクシー女優として世界的な人気を確立した。

 暫く作品に恵まれなかったが、67年には5人の異なる男を翻弄する魔性の女性を演じたルキノ・ヴィスコンティ監督らによるオムニバス『華やかな魔女たち』、ソフォクレスのギリシャ悲劇『オイディプス王』をパゾリーニ監督が映画化した名作で、息子であるオイディプスと交わってしまう王妃イオカステを演じた『アポロンの地獄』で、大人の魅力を持つ女優として見事に復活を果たした。

 その後はパゾリーニ、ヴィスコンティ作品の常連となり、裕福な上流階級や貴族の上品な夫人役を演ずる女優へと転身した。

 一家の母で夫人を演じた、ある青年が来訪するとその青年と男も女も家族全員が関係を持ってしまうというパゾリーニ監督の寓話的問題作『テオレマ』(68年)、タッジオの上品な母を演じた、トーマス・マンの同名小説をヴィスコンティが映画化した美少年タッジオに恋する老作曲家を描いた映画史上に残る名作『ベニスに死す』(71年)、ワーグナーの妻コジマを演じた、ワーグナーに傾倒し、ノイシュヴァンシュタイン城を建設した芸術の庇護者であった狂王と呼ばれたバイエルン国王ルードヴィヒ2世の生涯を描いたヴィスコンティの4時間の大作『ルートヴィヒ』(72年)、乱入した家族の母親を演じた、静かな生活を送る老教授の住居に乱入してきた家族と教授との奇妙な交流を描いたヴィスコンティの代表作『家族の肖像』(74年)などで、高い存在感を放った。

その後銀幕から遠ざかっていたが、84年には同名SF大作を映画化したデヴィッド・リンチ監督の『砂の惑星』に出演し、オールド・ファンを喜ばせた。

 

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