私小説&海外古典短編小説

『それでも恋するバルセロナ』結婚に向いた男(女)と恋人に向いた男(女)は別物 2008年: 8点

松田遼司の「旅行・音楽・美術好きのための映画・漫画評論」。アマゾンプライムなどで配信されている名作を中心にお届けします。

 今回は、『結婚に向いた男(女)と恋人に向いた男(女)は別物』だと示唆する『それでも恋するバルセロナ』を紹介します。

 

『それでも恋するバルセロナ』の概要

 『それでも恋するバルセロナ』は、スペイン・バルセロナを舞台に一人の男と三人の美女との恋愛関係を描いたウディ・アレン監督による08年公開のラブコメです。92年に大胆なセックス・シーンを演じ話題となり二人の出世作となった「ハモンハモン」以来の共演となるハビエル・バルデムペネロペ・クルスがプレイボーイの画家とそのいかれた元妻を演じています。二人は私生活でもパートナーであり息のあった演技を披露、ペネロペがアカデミーやゴヤ賞の助演女優賞を受賞しました。

 そして主役のヒロイン二人を演じたのがスカーレット・ヨハンソンとレベッカ・ホールで、タイプが正反対の女性を演じわけています。レベッカ・ホールのみ日本では無名ですが、この映画でファンになった人も多いのではないでしょうか?豪華キャストにアレン節炸裂で最高に楽しめる作品となっています。米国最大の映画データベースの批評サイトIMDbの視聴者263,000人による平均スコアは7.1とそこそこの評価です。

 

それでも恋するバルセロナ』のネタバレなしの途中までのストーリー

ネタバレなしの途中までのストーリーは、学生時代からの親友のヴィッキー(レベッカ・ホール)とクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)がアメリカからバルセロナへバカンスにやって来たところから始まります。恋愛に対して真面目で、ださいが好青年の婚約者ダグがいるヴィッキーに対しクリスティーナは自由恋愛主義者で、バルセロナでのロマンスを楽しみにしています。そして出会った画家のフアン・アントニオ(ハビエル・バルデム)にいきなり週末旅行に招待されます。ふしだらだと怒るヴィッキーと、喜ぶクリスティーナ。

 結局クリスティーナが心配なヴィッキーもついてくことになり、街を案内され、芸術や恋を語り合ううちに、ヴィッキーまでもがフアン・アントニオに惹かれていき、三角関係に陥ります。そんなことを知らないクリスティーナはバルセロナに戻ると、フアン・アントニオと同棲を始めますが、そこに彼の元妻のマリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)が現れ、さらに状況は混沌としてくのでした….

 

それでも恋するバルセロナ』を観ての感想

 堅物のヴィッキーがフアン・アントニオに恋に落ちるシーンではフラメンコの演奏が効果的に使われています。スペインの鬼才ペドロ・アルモドバル監督の名作『トーク・トゥ・ハー』でのブラジル音楽の巨匠カエターノ・ヴェローゾによる「ククルクク・パローマ」の名演が想起される場面です。その後はヴィッキーの婚約者が現れ、フアン・アントニオの元妻マリア・エレーナが登場し、ドロドロの3角関係・4角関係がアレン節の上質で下品なユーモアの中に展開されていきます。

 その笑いの中でアレンが問いかけているのは「相手に何を求めるのか」ということです。まず女性に対してつまらないけれども、自分を愛してくれる、そして経済的に裕福なダグのような誠実なアングロ・サクソン系の男」か、それとも「セクシーで、女を喜ばせる術を全て心得ている、経済的には安定していないが才能にあふれた、だけど自分を愛してくれないフアン・アントニオのようなラテン系の男か?」

 もちろん両方持っている男がいいに決まっていますが、そんな男はなかなかいないし、自分を愛してくれる可能性はさらに低いでしょう。男性に対しては「クリスティーナのような頭もよく、きれいな、自由にいきる女性」か、「マリア・エレーナのような美しいが、ちょっと狂っている破滅的な女性」か、そして「ヴィッキーのように清楚な美しさを持つ良妻賢母タイプ」か?

 女性にとっては恋人にはファン・アントニオ、夫にはダグというのが天国で、反対が地獄。男性にとっては恋人にはクリスティーナ、妻にはヴィッキーというのが天国、恋人がヴィッキーで妻がマリア・エレーナが地獄というところでしょうか?

 バルセロナなどスペインの情景が美しく、旅行好きにオススメです。セクシーな俳優や美女、音楽にも癒やされるでしょう。誰もが楽しめる秀作と言えるでしょう。

 

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