ウディ・アレン(Woody Allen)松田遼司映画評論スコア(8点)
ひねくれた、独特のユーモアで観客を爆笑に巻き込む現代を代表する監督。70年代後半から現代まで高い人気を維持している。俳優、コラム作家、クラリネット奏者としても有名。
1935年ニューヨーク・ブロンクス出身。東欧系ユダヤ人の家系に生まれた。放送作家、スタンダップ・コメディアンを経て65年『何かいいことないか子猫チャン』の脚本、出演で映画デビュー。『ボギー!俺も男だ』(72年)、脚本、監督、出演を手がけた『ウディ・アレンの愛と死』(75年)などで着実に人気を得た。
77年にはダイアン・キートンと共演した『アニー・ホール』が大ヒット、アカデミー監督・脚本賞を受賞し、一気に人気監督となった。78年には敬愛するベルイマン監督のスタイルを真似たシリアスな人間ドラマ『インテリア』を発表、新境地を開拓した。79年には愛するニューヨークを舞台に浮気ものの主人公を演じた『マンハッタン』、80年には、シャーロット・ランプリング共演の敬愛するフェリーニを模した『スターダスト・メモリー』と脚本、監督、主演を兼ねた名作を発表し、世界を代表する名監督のひとりとなった。
キートンと別れ、ミア・ファローが私生活のパートナーとなり、以降ミアを主演に多くの作品を発表した。代表作は『カメレオンマン』(82年)、『カイロの紫のバラ 』(85年)、『ハンナとその姉妹』(86年)、『ラジオ・デイズ』(87年)、『アリス』(90年)などが挙げられる。
その後ミアと別れ製作も一時停滞したが、97年にはオールスターキャストのミュージカル・コメディ『世界中がアイ・ラヴ・ユー』を発表、復活を印象付けた。以降、『地球は女で回ってる』(97年)、ケネス・ブラナー主演の『セレブリティ』(98 年)、ショーン・ペン主演の感動作『ギター弾きの恋』(99年)とヒット作を連発した。
21世紀に入るとニューヨークを離れ、スカーレット・ヨハンソンを新たなミューズに迎えた作品を発表している。ロンドンを舞台にしたシリアスな犯罪劇『マッチポイント』(05年)、ミステリー・コメディの『タロットカード殺人事件』(06年)、ヨハンソンに加えハビエル・バルデムとペネロペ・クルスのスペインコンビを迎えたバルセロナ舞台の『それでも恋するバルセロナ』(08年)などの意欲作を発表した。
その後も、1920年代のパリにタイムトリップする男を描きアカデミー脚本賞を受賞したファンタジー『ミッドナイト・イン・パリ』(10年)、『ローマでアモーレ』(12年)、1920年代のコート・ダジュールが舞台の『マジック・イン・ムーンライト』』(14年)など欧州での作品が続いた。
16年に『カフェ・ソサエティ』で久しぶりにハリウッドが舞台となったが、やはり時代は1920年代であり、「往年への郷愁的な作品」となっている。19年にはティモシー・シャラメ、エル・ファニングなどの若手を起用した『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』を発表したが、#MeToo運動に巻き込まれ上映中止となってしまった。